ゴールドリングは14金

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古今より貴金属装身具において、ゴールドは最も好まれ、且つ資産価値の高い地金です。

本ページではゴールドでカレッジリング・チャンピオンリングをお作りになるご検討をされているお客様へご検討材料を提供致します。

ゴールドのカレッジリングは高い?!

一般的なジュエリーと比べてボリュームのあるチャンピオンリング・カレッジリングのゴールドリングは非常に価格が高いと感じるお客様がいらっしゃいます。特に昨今は国際紛争や国際経済情勢、円安の影響もあり、歴史的な金価格水準ですので、俗に言う「原材料高」の要素もあります。

しかし、カレッジリングはボリュームの小さな一般的なジュエリーやリングと比較すると重量で平均3~5倍の地金を使うため、材料としての地金代自体が高額になるのは確かですが、そのボリュームに従って資産価値も高くなります。

左:ラージモデルのカレッジリング 中央:ユニセックスモデルのカレッジリング
右:一般的なファッションリング

以下のページにゴールドリングの価格構造や金価格について詳しく記しました。宜しければご一読下さい。

ゴールドリングは14金がベスト

日本では一種の「18金信仰」がありますが、世界的には着用による打突や摩耗のリスクがある指輪(リング)では14金が主流です。

14金イエローとホワイトのコンビメタルのチャンピオンリング

古来からのゴールドジュエリーの本場、イタリアやスペインでもネックレスやピアスなどは18金でも、リングは14金と装身具の種類によって使い分けています。アメリカではリングのみならず、全装身具で14金が好まれています。

なぜでしょうか? まず各種貴金属合金の組成を見てみましょう。

以下は、貴金属の組成と硬度等の詳細です。

注目すべきは赤枠の「HV硬度」です。HV硬度(別名ビッカーズ)は、金属の硬さを数値化したもので、数値が大きければ大きい程硬く丈夫で、数値が小さくなれば柔らかく脆弱になります。

14金のHV硬度は【220】と貴金属合金中、最高値になっており、硬い事で有名なステンレススチール(表のSUS316L)の【200】をも上回ります。

18金は確かに艶といい色合いといい美しいですが、実はHV硬度150とシルバー並の強度しかありませんので、日常的な着用での打突や摩擦で「ボロボロ」になりがちです。

質店で撮影した長年使用した18金の指輪

上の写真のようにシルバーリングと同じように丸まって(摩耗)しまい、キズだらけになるものです。

18金は見た目の美しさの黄金律

14金は丈夫さの黄金律

と言えます。

彫刻が深く、角が多いカレッジリング・チャンピオンリングには14金が最もベストの材料なのです。

14金製チャンピオンリング

ゴールドリングの資産価値

どれほど時が流れても金は変質変色劣化する事はありません。ご自身が着けなくなっても、ご子孫や大切な方に受け継ぎ、未来に残す事が出来ます。そして金には絶対的な資産価値があります。金の装身具はクルマや家具・衣料品などと違い、価値が目減りしない最高の安全資産と言われています。

100年に渡って金の価格は上昇

金は価格変動がありますが、一般的にインフレなどの要因で貨幣価値が目減りした時、その価値は上昇します。歴史的にも価値は上がり続けており、わずか15年前と現在を比べても“価格は4倍以上”に上昇しています。

投資という観点からも紙屑同然となり得る株券や債券とは性質が全く異なり、価値がゼロになることが無いのは金の大きな魅力であり、投資的価値としても大変注目されています。

以下の楽天証券が公表している過去47年間の金価格チャートでも明らかです。

地下資源である金は採掘できる量に限りがあります。金鉱山で1トンを採掘して、実際に取れる金はわずか3~5g程です。既に世界中の金鉱山は概ね掘りつくされており、現在は深海底から採掘しているのです。

日本が「黄金の国ジパング」と呼ばれた中世、当時では世界屈指の採掘量を誇った佐渡金山も第二次世界他戦後には採掘が枯渇し、ついに1989年(平成元年)には閉山になっています。

しかし、このように供給量が減少傾向であるにも関わらず、IT機器の心臓部であるマイクロチップなどを中心に、金の需要は旺盛ですので、金の価格・価値は下降する要素はありません。

田中貴金属グループのサイトで公表されている2019年の日本国内での金の用途別グラフ
Intel Core i7 6700K CPU bottom view

特にウクライナ紛争を契機に「有事の金」の格言を裏付けるように、金価格が上昇しています。これを理論的に説明する記事が2023年5月7日の日経新聞に掲載されていました。

トルコ、中国、エジプト、カタール、インドなどの中央銀行(日本で言う日銀)が金の保有を大幅に積み増しているのです。

これらの国々は、大ぐくりでは「グローバルサウス」と言われる新興国です。ウクライナ紛争で明確化した「ロシア+中国」vs「アメリカ・欧州とその同盟国」の対立に中立的立場を取る国々でもあります。

記事ではなぜ、それらの国々が金保有を増加させているのかを説明しています。大雑把にまとめると、アメリカ・欧州がロシアに対して経済制裁を科し、輸出入のドル建て決済から締め出したのを見て、それらの国々もいざという時に備えて、通貨では無く金を資産(すぐに現金化出来る)を積み増したのです。

一種の国力の源泉でもある中央銀行の保有資産ですが、以下のグラフのように欧米諸国はそれらの「グローバルサウス」を大きく上回る金を保有しています。

つまり国際的に認知されている「最高の安全資産=金」という事です。

金装身具を換金する

「金やプラチナを買い取ります」という広告をよく見かけると思います。彼ら地金買い取り業者は、相場で買い付けた金を中長期で保有し、金相場や為替レートの有利な時に転売する商売ですので、金価格が上昇する前提のビジネスモデルです。

「母親(父親)の遺品の金装身具を売ったら買った値段より高く売れた」という話しを聞く事があると思います。これはほぼ事実です。

以下は2023年春(4/7)時点の金相場に基づく試算です。

例えば、金価格がとても安かった22年前の2000年に14金10gの指輪を3万円で購入したとします。

14金ですから含まれる金は重量比約58%の5.8gです。当時の金相場1g13.8ドル×5.8g=80.04ドル・当時の為替レートで1ドル105円として金だけの価格は8,404円程で、差額が他材料費・工賃・販売者利益です。

その14金10gの指輪を2023年4月に地金買い取り業者に売ったとしたら。

金含有量5.8g×金価格1g9,397円=54,503円

工賃や販売者利益を含んだ3万円の金の指輪は、20年間使った(所有していた)にも関わらず購入価格の約1.8倍の5万円以上で売れるのです。

従って、装身具としてご自身が着用し、楽しみながらも資産価値を形成し続けるゴールドリングは、余裕があればお勧め出来ます。

現在、当社で14金約16gのスタンダードモデルのカレッジリングをお求め頂くと約30万円前後の価格です。(2023年春時点)

決してお安くありませんが、含まれる58%=9.28gの金は将来に渡り、価値を維持若しくは上昇します。

金装身具は、大事に使えば人間より長生きする(変質・劣化しない)ものです。お子様の代まで受け継ぐものとしては、不動産と同様に資産と言えますのでお買い求め頂ければ、中長期で損をされる事は無いでしょう。

日本人の18金信仰

日本では根強い18金信仰があると言われています。

欧米ではネックレスやピアスなど打突・摩耗が無い装身具には18金、打突摩耗のリスクの高い指輪には14金と使い分けられていますが、日本では全ての装身具に18金が好まれています。

なぜでしょうか?色々調べても分かりません。

確かに18金は「黄金律」と言われる美しい金色ですが、実際の着用や装身具毎の特性を考えると、欧米のように材料として14金と使い分ける方が合理的ですが???

これは筆者の個人的見解ですが、まず日本にネックレス・リングなどの貴金属製装身具が定着したのは、まだ約半世紀程前の第二次世界他戦後の昭和30~40年代と歴史が浅いという事があります。

シーザーやクレオパトラの時代から数千年の装身具の歴史を持つ欧州と比較すると、わたくしども日本の装身具産業と市場は未熟と言えます。

金の髪飾り、金とサンゴ・ターコイズ・ラピスラズリなどの首飾りつけたクレオパトラのイメージ

昭和30-40年代は高度成長期でもあり、急速な欧米化に伴い、金銀のジュエリーも流入しました。その際、欧米のジュエリーで「最も好まれる素材」として【18金】という解釈がなされたようです。

その原因は以下の二つが考えられます。

一つは、日本の装身具産業が見本にしたブルガリ・バンクリーフ&アーペル・カルティエなどの欧米ブランドのハイジュエリーラインは18金が中心でした。但し、これら「ハイジュエリー」は日常の装身具ではなく、富裕層がパーティーなどに着けていく華やかなジュエリーです。

TPOSで「晴れの場」向けのハイジュエリーは、当然ですが打突や摩擦、海水や温泉など貴金属に影響を与えるシチュエーションでは使われません。従って、色目の美しさ・華やかさが重視されますので、柔らかな18金でOKです。

二つ目は、ローマ法王の「漁師の指輪」の存在もあるでしょう。法王に謁見した信徒がひざまづいて指輪にキスする事は有名です。

「漁師の指輪」は、初代法王の聖ペトロが漁師出身だったからその名で呼ばれています。法王毎に作り替えられる(各人毎にサイズが違う事もある為)のですが、多くは18金素材と言われています。(但し、法王は朝から晩まで「漁師の指輪」を着用している訳では無いでしょう。公式の場、信者との閲覧などの際に着用すもので、打突や摩耗は心配ないはず。)

上記二つの理由から、

装身具で最も良いのは18金

という概念が日本に定着したのではないかと推察しています。

おまけ:プラチナについて

日本における18金信仰同様に、プラチナの装身具に対する概念も日本と欧米には差があります。

まず、プラチナは装身具にはあまり向かない素材です。延展性(延び)数値が非常に低く、また貴金属の中でもかなり柔らかい部類で、HV硬度は80です(シルバー952と18Kは150、14Kは220)。

その柔らかさを克服するために、「ハードプラチナ」と呼ばれるものもあります。これはPtにルテニウムなど硬度の高い金属を若干、配合する事で硬度が120-150程度まで上がりますが、その代わり更に延展性が無くなり、以下の画像のような非常にシンプルなデザインのものにしか加工出来なくなります。

また、プラチナ本来の色は「鈍い灰色」です。

磨けば艶は出ますが、上記のように柔らかいので、すぐにキズが付き、艶感が無くなってしまいます。

従って、プラチナリングの過半数は「ロジウムメッキ」が施されます。一般的にはロジウムの強い反射の銀灰色をプラチナの色と認識しているようです。

先のシンプルなデザインのペアリングはいずれもロジウムメッキの色であり、左写真のプラチナ無垢の色とは異なる事が分かると思います。

実は、海外ではマリッジリングも含め、ジュエリーの主流はゴールドです。そもそもプラチナは鉄と同様の「工業用金属」の概念です。

以下は楽天証券サイトにあった日本国内のプラチナの用途別グラフです。宝飾品への利用は、メッキ材も含めても22%程しかありません。海外で同じグラフを作ると、更に宝飾品利用の比率は低いでしょう。

しかし日本では「婚約指輪や結婚指輪はプラチナ」という概念があります。リングが「日本人の18金信仰」とともに、なぜ日本でプラチナがマリッジリングに好まれるようになったのか、明確な理由は分かりませんが、以下のように言われています。

*戦後しばらくは、金よりプラチナが高価な時期があり、貴金属で最も高価なのはプラチナという概念が定着した

*変色・変質しない地金の性格から、永遠や不変が求められるマリッジリングのイメージに合致した。

しかし実際には、プラチナとゴールドの価格は以下の通りです。(田中貴金属サイトより)

金1g=9,722円に対してプラチナ1g=5,226円と約半分の価格です。

「プラチナでカレッジリングを作って欲しい」というご要望もたまにあります。

しかし、上記のような地金特性により、プラチナでカレッジリングを作ると、文字数字やロゴの再現性が低い「出来の悪い商品」になってしまい、且つ数年であっという間に摩耗・欠け・変形してしまうでしょう。従って、プラチナでカレッジリング・チャンピオンリングをお作りする事は全てお断りしています。

もう一つは、弊社独自の物理的理由もあります。

プラチナの融点は1800℃、ゴールド・シルバーは800℃と大きく異なります。鋳造機は、500℃台の低温用(鉛・亜鉛など)、800℃~1000℃の中温用(金銀)、1800℃の高温用(プラチナのみ)の3種ありますが、Philip Champion Ring and College Ringでは中温用の鋳造機しか持っていませんので、プラチナの鋳造が出来ないのです。

文責:有限会社フィリップチャンピオンリング アンド カレッジリング代表取締役 渕上 祥司

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