アイビー世代のオヤジ達への手紙

文責:フィリップカレッジリング代表 渕上 祥司

「アイビー世代」。

調べますと正しくは、1960年代中盤に始まったと言われる「みゆき族」をはじめとするアメリカ東海岸アイビーリーグのトラッドファンションを身にまとった当時の若者達(きっと当時大学生から20歳代の世代)となります。まさに「団塊の世代」の方々を指すのでしょう。

わたくし(Philip College Ring代表:渕上)は1960年生まれなので団塊世代ではありませんが、アイビー世代の末裔になります。中学生になり、髪にドライヤーをあて、オヤジのバイタリスを勝手に使って怒られた「色気づいた」年頃(1970年初頭)には、東京ではアイビーブームも最盛期を過ぎた頃でしょうけど、わたくしの育った地方都市はまさにアイビー真っ盛り。中学生や高校生の頃ですから「流行の最先端」を追い掛けるだけの経済的余裕はありませんでしたので、巷のカッコイイ先輩達のファッションに憧れる・・という形でアイビーを甘受したものです。

高校生になった頃、近所の仲の良い友人が繁華街のアイビーファッション衣料品店で店員のアルバイトをし出しました。VANやJUNの服やローファーなどを扱う、当時の最新流行ファション店です。その彼は、同級生なのに私とは全く次元の違うファッションでキメていてアセりました。。。。。。キャメルのコッパン(コットンパンツ)、ネイビーブルーのジャケットの胸にはカッコいいエンブレムの刺繍、ボタンダウンのシャツ、足元はコインローファーに白のラインソックス、ヘアスタイルはアメリカ人のようなウェーブのかかったヨコワケヘアーにポマードテカテカ・・・

彼がファッションの話をするのですが、ついていけません。「平凡パンチ」「メンクラ(Men’s Club)」や「チェックメイト」を読み漁って勉強したものです。

カレッジリングもそれらの雑誌で知りました。ステータスシンボルですね。「金モールエンブレムやカレッジリングはアイビーの必須アイテム」とか言われても・・・・貧乏高校生の私には、ピンと来ないほど高価な貴金属、「オカネモチのボンボンじゃないと手が出ない品」の位置付けでした。

そりゃそうです。当時の経済事情を今になって振り返ってみると見えてきます。為替レートは1ドル300円前後、金銀製品の関税はべらぼうに高く、FedexやUPSのようなお手軽国際宅急便が存在していない時代です。アメリカで1個50ドルのカレッジリングを個人輸入しようとすると、関税・運賃など含めると円換算で5万円近くなり、当時の大卒初任給(月給4万円)よりも高い買い物になるのです。

その後いくつかの米国カレッジリングメーカーが日本代理店を通して進出して、先進的な私立大学を中心に卒業記念品として販売されました。当時のカレッジリングの多くは、シルバーにニッケルを混ぜた「銀合金」が主流だったようです。1980年代になっても為替は200円台、純度の高い金銀製品は現在のようにお手軽な価格で購入出来るモノではありませんでした。

アイビーファッションに身を包んだ最先端の方々にとってもカレッジリングはまだまだ「高値の花」だった事でしょう。そしてアイビーブームの終焉とともにごく一部を除いて多くの業者がカレッジリング事業から撤退し、本来「一生物」であるはずのカレッジリングのメンテナンス&ケアも放置された状況になりました。

その後、輸入自由化や円高の影響でカレッジリングは「ユーズド(中古品)」が多く出回り出します。米国で大学卒業時に購入した10Kや14Kのカレッジリングを社会に出てカネに困った人がパウンショップ(質屋)に持ち込んだものをユーズドのジーンズや衣料とともにアメリカから買い付けてきたアメカジショップさんが販売したのです。

指輪に刻んである年号が自分の誕生年と同じだとかナントカこじ付けながら他人の名前の入ったカレッジリングを購入・・・というちょっといびつなカレッジリング市場が出来上がりました。

当社がカレッジリングビジネスを始めた時、知人からは「誰も新品のカレッジリングなんか買わないよ・・・」「えー、、オーダーメイド??作らないよ・・」と言われたものです。でも私も含め、若い頃に憧れたアイビーの象徴的アイテムであるカレッジリングを若い頃を回想するホビーアイテムとして購入するモチベーションが「アイビー世代のオヤジ達」にあると確信していました。

そもそもカレッジリングは、1個づつのオーダーメイド品、「身に着ける勲章」ですから。

御蔭様で今はまさに、多くのお客様に「復刻版卒業記念リング」をお作り頂いています。

「欲しかったんだけど当時は買えなかったんだよ」
「当時買った品を無くしてしまった」
「30年振りの同窓会に是非とも着けて行きたい・・」
「当時買った品は合金製で、今の歳ではちょっと着けられない」

などの御言葉とともにご注文を頂戴しています。

ほとんどの御注文品に彫り込まれる年号(卒業年)は、1960年代から1980年代です。

Philip College Ringでは文字通り「一生物リング」として、ご注文品には初期の1年間の無償修理保証とともに、永年に渡ってサイズ直しや補修代は実費相当の永年保証で対応しています。きちんとメンテナンスしてやれば、シルバーやゴールドの指輪は私達より長生きします。わたくし自身も還暦。いつまで修理出来るか(生きているか?)わかりませんが、仕事出来る限りは皆様の御注文品をケアし続ける所存です。

子供達も成年し、人生を振り返る時もありますね。

アイビーのあの頃の甘美な香りを、カレッジリングで思い出すのも熟年の楽しみじゃありませんか?

Philip College Ring
代表 渕上祥司

^