北米チャンピオンリングの歴史
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- チャンピオンリングの誕生
- チャンピオンリングの原型はカレッジリング
- チャンピオンリング独自の発展の開始
- チャンピオンリング=キラキラストーン
- チャンピオンリング文化の確立と大型化
- チャンピオンリングのデザインには意味がある
- よりカラフルに、より高度に
- チャンピオンリング・セレモニー(贈呈式)
- 優勝だけじゃないチャンピオンリング
- ハイジュエリーの技法を取り入れる
- 更に進化するチャンピオンリング
- そしてチャンピオンリングのビジネルモデルの確立
チャンピオンリングの誕生
MLB(野球)、NFL(アメフト)、NBA(バスケ)、NHL(アイスホッケー)が【北米4大スポーツ】としての地位を確立した1950-60年代のアメリカでチャンピオンリングが生まれました。
球場近辺在住者のみが試合会場に足を運んでいたスポーツですが、テレビの普及と全国放送のコンテンツとしてプロスポーツが採用される事によってプロスポーツの裾野が広がり、アメフト・バスケ・野球・ホッケーの4スポーツリーグが国民的エンターティンメントとして急速に発展したのです。
MLB/NFLでは球場建設ラッシュが起こりました。1965年には世界初のドーム球場「アストロ・ドーム」が登場しました。これらの新スタジアムは、人工芝の導入とともにTV・ラジオ放映設備も設置され、より多くの人々がプロスポーツをを楽しむことが出来るインフラが整備されていきました。
それらの大規模球場の多くは、開催時期が異なるMLBとNFLのチームが共有し、春夏のMLB・秋冬のNFLという「マルチスポーツ」の概念とともに相互に発展しました。
日本ではNHL(ナショナル・アイスホッケーリーグ)の存在感は薄く、NBA(ナショナル・バスケットボールアソシエーション)がポピュラーですが、実はNHLのプロ化は1918年と早く、北部・東部では第一次世界大戦(WW1)頃から人気でした。
NBAは4大スポーツの中では最も遅く、WW2後の1940年代後半に設立されます。創設の目的は「NHLが開催されるアリーナの空き時間を埋めるため」だったそうです。しかしNBAは、「24秒ショットクロック」の導入などで試合のテンポを早くし、タイムアウトやインターバルの時間を厳密に決め、TV放映の「尺」を意識したゲームを収めるようにしてTVの有力コンテンツとなり、チアリーダーのダンスやハーフタイムショウなどで娯楽性の高いものにしました。また、積極的に黒人選手を迎え入れ、従来の「プレイヤーも観客(視聴者)も白人」から人種的マーケットを拡大し、「NHLの前座」的位置づけでスタートしたNBAは、NHLを上回る人気を博すまでに成長しました。
「北米4大スポーツ」として発展した野球・バスケ・アメフト・ホッケーには、高年俸のスター選手も続出し、その選手たちへの優勝時の褒賞としてチャンピオンリングも生まれたのです。
チャンピオンリングの原型はカレッジリング
記録に残っている最古のチャンピオンリングは、1953年NYヤンキースのチャンピオンリングです。↓↓↓↓↓
NYヤンキース1962年チャンピオンリング↓↓↓↓↓
LAドジャーズ1963年チャンピオンリング↓↓↓↓↓
見ておわかりになるように、初期のチャンピオンリングは「カレッジリングそのもの」の形状・デザインでした。
これは、アメリカにおいてカレッジリングが陸軍士官学校やアイビーリーグなどの学歴的エリートの証しだったものを、プロスポーツで成功した「スポーツ・エリート」に置き換えた為です。
NFLグリーンベイ・パッカーズ1967年チャンピオンリング
チャンピオンリング独自の発展の開始
チャンピオンリングの大きな転換は、1967年に起こりました。1966-67年とNFLを連覇したグリーンベイ・パッカーズが2度目・連続となるチャンピオンリングに大きなイメージの転換を求め、1967年のチャンピオンリングにカレッジリング型ではない独特のチャンピオンリングを初めて作ったのです。
カレッジリング型のままでは、年号の違いなどよく見ないとどっちがどっちかわからないものになるからでしょう。
NFLグリーンベイ・パッカーズ1967年チャンピオンリング↓↓↓↓↓
まだ人口宝石が一般的では無かった為かチームカラーをエナメルで表現し、アメフトらしいヘルメットのデザイン、優勝年のフラッグ、プレイオフの戦績などが彫り込まれ、現代のチャンピオンリングのデザイン要素が確立された最初のリングでした。
こうしてチャンピオンリングは王者の証し・身に着ける勲章として発展していったのです。
その後、チームカラーをトップに据えたデザインの大型チャンピオンリングは、MBL/NBA/NHLにも広がりました。
MBL NYメッツ1969年チャンピオンリング
NFLカンサスシティ・チーフス1969年チャンピオンリング
MLBオークランド・アスレチックス1972年チャンピオンリング
この時代のチャンピオンリングの特徴は、大粒のセンターストーン又はエナメルでチームカラーをシンプルに表現するものでした。そして量産化に成功した人工ダイヤ(キュービックジルコニア)の普及で、キラキラのラインストーンも取り入れられました。
NFLオークランド・レイダーズ1976年チャンピオンリング
MBL NYヤンキース1977年チャンピオンリング
MBL NYヤンキース1978年チャンピオンリング
チャンピオンリング=キラキラストーン
チャンピオンリングに次の転機が訪れたのは1978年NFLピッツバーグスティーラーズのリングでした。大粒ストーンでチームカラーを表現せず、トップ一面にダイヤを敷き詰めたのです。この技法は、欧州の高級ブランドジュエリーで使われていた「パヴェ・セッティング」という小粒石を敷き詰める技法を取り入れたのです。
トップは、スティーラーズのマークの十字の星で優勝回数3つをあしらったものですが、その隙間の石使いが絶妙の配分です。
トップ選手用にはゴールドリングに天然ダイヤモンド、そして控え選手やチームスタッフには既に量産化され廉価になっていた人工ダイヤを使ったものとチャンピオンリングにグレード(階級)が出来たのもこの頃です。
当然、MBL他のチャンピオンリングにもこのラインストーン使いの技法が波及しました。
1986年 NYメッツのチャンピオンリング
1987年 NFLワシントン・レッドスキンズ(現コマンダース)のチャンピオンリング
サイドパネルに贈呈される選手の登録名と背番号が必ず入るようになったのも1980年代からです。
チャンピオンリング文化の確立と大型化
そして1990年代に入ると、チャンピオンリングは大柄な体格のアスリート達が着用して「フォトジェニック」になるよう、大型化していきました。
NBAシカゴ・ブルズ1991年チャンピオンリング
MJの愛称で知られるマイケル・ジョーダンは「史上最高のバスケットボール選手」と言われ、NBAを世界的ブームに牽引した最重要人物です。シカゴ・ブルズ在籍時に計6回の優勝を果たし、6個のチャンピオンリングをコレクションして着用した上の画像は、バスケットボールのみならずスポーツで成功したプロスポーツ選手達にとって「王者の証し=チャンピオンリング」の象徴となり、チャンピオンリング文化が確立されたのです。
NFLダラスカウボーイズ1993年チャンピオンリング
薬指にカレッジリング、人差し指にカウボーイズのチャンピオンリング↓↓↓↓↓ 日本人の体格だと第二関節が曲がりません。
このカウボーイズのリングのトップの4つのマーキースカットストーンは、累計4回目の優勝を象徴したものです。このように、トップやサイドの彫刻に意味を持たせるようになったのは、1990年代からでした。
ダラスカウボーイズ1995年チャンピオンリング
累計優勝回数5回をテキサスの州のローンスター(一つ星)に石を5個入れこんで表現してあります。
NFLデンバー・ブロンコス1998年チャンピオンリング
1997年・1998年とスーパーボウルを連覇した事をトレードマークの馬を2頭並べて表現してあります。
MLBニューヨーク・ヤンキース1999年チャンピオンリング
デザイン的なもう一つのトレンドとして、「ホームタウン」をサイドパネルに表現し出しました。以下のデザインは、ヤンキースタジアムに優勝トロフィー、その背景にスタジアムから見えるニューヨークの街並みが彫り込まれています。
反対側サイドパネルには、ヤンキースタジアムの正門が彫り込まれました。
チャンピオンリングのデザインには意味がある
1950年代にチャンピオンリングが北米4大スポーツに導入されてから数十年が経ち、チャンピオンリングはただ単なるキラキラした大型の指輪というだけでなく、トップのデザイン・サイドの彫刻に優勝回数やホームスタジアム・ホームタウンなどを表現するなど、意味を持たせるようになりました。
従って、デザイン提案力とともに、そのデザインを実際に表現する為の高度な彫刻技術や石留技術、エナメル着色などの技法が求められるようになったのです。
各優勝チームの地元の宝飾業者などが作っていたチャンピオンリングですが、このようにデザインが高度化したチャンピオンリングを製作出来る技術を持つメーカーは北米でも限られた生産者のみになっていきました。
MLBニューヨーク・ヤンキース2000年チャンピオンリング
また、当然ながらヤンキースのような強豪チームは多数の優勝回数(ヤンキースはこの時で優勝26回目)や連覇などがありますので、デザインや仕様で差別化とともに連続性を持たせるようになっています。
この2000年のチャンピオンリングは、トップもサイドも1999年と「同じ顔」をしていますが、前年がホワイトゴールドだったものをイエローゴールドにして、よく見るとサイドの彫刻内容も連続性があるように微妙に違っています
NFLセントルイス・ラムズ2000年チャンピオンリング
右サイドには、スーパーボウルでのラムズvsタイタンズのスコアが彫刻されています。
NFLボルティモア・レイベンズ2000年チャンピオンリング
NFLニューイングランド・ペイトリオッツ2001年チャンピオンリング
よりカラフルに、より高度に
2000年代に入り、優勝回数を重ねる=チャンピオンリング製作回数の多いチームからは従来にないデザイン・印象を受けるチャンピオンリングを求められるようになり、メーカーは知恵と技術を絞り出し、チームカラーの表現に特注カットストーンや複数色の石使いなどで応えるようになってきます。
MBLアナハイム・エンジェルス2002年チャンピオンリング
トップのAには、ルビーが使われていますが、既定のプリンセスカットをA文字にはめ込む為に特注カットにしてあります。
MLBフロリダ・マーリンズ2003年チャンピオンリング
従来は単色のストーン使いだったチャンピオンリングに複数色のストーンを組み合わせるとともに、ホワイトゴールドとイエローゴールドの「コンビネーションメタル」又は「ツートンメタル」と言われる技法を取り入れた最初のチャンピオンリングと言われています。このツートンメタルも、ブルガリやカルティエなど欧州高級ブランドジュエリーの技法です。
リングボディはホワイトゴールドですが、トップのマーリン(カジキマグロ)とロゴをイエローゴールドにして、更にMarlines周囲に黒エナメルが使われ、ロゴを強調しています。小粒石は、ホワイトのダイヤに加え、マーリンの目にブルートパーズ、周囲の飾りにルビーと3色のストーンに2色の地金、黒エナメルでとてもカラフルなチャンピオンリングになっています。
サイドパネルの優勝トロフィーとWORLD SERIES100TH ANNIVERSARY部分もイエローです。
NFLニューイングランド・ペイトリオッツ2003年チャンピオンリング
このリングは、カラフルさよりも立体造形の複雑さと複数のカットの石を使った「玄人受け」するチャンピオンリングです。
平面図で見ると、2001年のペイトリオッツのチャンピオンリングと「同じような顔」をしているはずですが、トップの立体造形は3層にも4層にもなる複雑さです。
そして、テーパードカットとプリンセスカットの石を複雑に組み合わせた「チャンネル・セッティング」、大きなマーキスカットの石2個は、通算優勝回数を表現しています。丸いラウンドカットを合わせて4種のカットのダイヤモンドが使われています。
MLBボストン・レッドソックス2004年チャンピオンリング
このリングトップのブルーの石はレクタングルのサファイヤの四隅のみを使ってあります。
Bロゴのレッドはルビーのエメラルドカットとバケットカットをロゴにぴったり収まるように1個づつ特注カットしてあります。ダイヤモンドもトップ1周は通常のラウンドカットですが、Bロゴの背景(ベースボールダイヤモンド)には、正方形のプリンセスカットが使われています。
NHLアナハイム・ダックス2007年チャンピオンリング
トップのDロゴには、黒とオレンジのエナメル、そしてグリーンサファイヤが使われています。
チャンピオンリング・セレモニー(贈呈式)
4大スポーツでは、優勝した翌シーズンの開幕戦で大々的に「チャンピオンリング贈呈式」が行われるようにもなりました。
MLBニューヨーク・ヤンキース2009年チャンピオンリング
このヤンキースの優勝では松井秀喜がワールドシリーズのMVPになりましたが、オフにアナハイム・エンゼルスに移籍しました。チャンピオンリング贈呈式の行われた開幕戦では、偶然にも対戦相手がエンゼルスだったので、移籍した松井にもチャンピオンリングが贈呈され、とても話題になったものです。
その様子は、You Tubeにアップされています。
このPart2の6:28秒から松井にチャンピオンリングが贈られるシーンが克明に映っています。
NBAロサンゼルス・レイカーズ2009年チャンピオンリング
このリングは、あまり高度な技法は使われていませんが、ダイヤモンドの数とグレードは金額的にはかなりのものと思われます。正確にはわかりませんが、画像を見る限り、ダイヤはVVSクラス以上、カットも素晴らしいので俗に言う「トリプルエクセレント」グレードと思われます。個数から換算すると合計約5ctくらい?素材としてのダイヤの材料費だけでリング1個当り50万円程(当時)と想定されます。
NBAロサンゼルス・レイカーズ2010年チャンピオンリング
スーパースター、コービーブライアントとスペイン代表の主力パウ・ガソルの2枚看板でNBA2連覇を達成したレイカーズは、2年続けてのチャンピオンリングを「似た顔」ながら工夫を凝らした作りにしてきました。
まず、リングボディはホワイト、トップのエンブレムはイエローのツートンメタルです。前年はトップに1個だった優勝トロフィーを両脇に2個にして連覇を表現。そしてダイヤモンドは前年に続いてトリプルエクセレント・グレードを5ct相当搭載しています。拡大画像でもわかるように、ダイヤの裏面の放射線状のカットが明確に見えているので、クラリティ(透明度)、カットの良さが一目でわかります。
そしてチャンピオンリング・セレモニー↓↓↓↓↓
チャンピオンリングは貰える選手やコーチ陣の誇りでもあり、その喜びをアリーナ・スタジアムいっぱいのファンとも分かち合うエンターティンメントのキーエレメントに発展したのです。
優勝だけじゃないチャンピオンリング
チャンピオンリングは直訳で「王者の指輪」です。もちろんリーグ戦、その他、大会での優勝時にチーム所属者に贈られるものではありますが、「王者」に値いする個人にチャンピオンリングを贈る場合もあります。
コービー・ブライアント引退記念リング
<以下、バスケット情報ウェブサイト Basket Countの2016/4/17の記事より引用>
レイカーズは『コービー・ブライアント引退記念リング』を製作し、コービーとバネッサ夫人に贈呈。まるで優勝リングと同様に光り輝くリングの中央には、優勝した者しか触ることが許されないラリー・オブライエン・トロフィーと『LAKERS』の文字、そしてブライアントの優勝回数(5)を示すダイヤモンドが散りばめられている。それらを『KOBE』、『BRYANT』という文字が挟むデザインだ。
一方にはコービーがキャリアをスタートさせた1996~2005年まで着用した背番号8番のレイカーズ・ジャージーと『TWENTY YERS』という文字、反対側には愛称として知られる『BLACK MAMBA』という文字と2006~2016年まで着用した背番号24のジャージーが刻まれている。そして、毒蛇の鱗模様がリングの内側に彫ってある非常に凝ったデザインだ。
このように「王者」に値するスタープレイヤーの引退時や通算***本塁打など偉大な記録の時もチャンピオンリングが作れられるようになりました。
ハイジュエリーの技法を取り入れる
NFLグリーンベイ・パッカーズ2010年チャンピオンリング
1960年代に現在のチャンピオンリングのロールモデルを初めて製作したパッカーズのチャンピオンリングも時流にあわせて高度化しています。ツートンメタル、4回のスーパーボウル制覇を表現した4角のマーキースカットストーン、Gの背景にはエナメル(七宝焼き)が使われました。
従来の着色は、ソフトエナメルと呼ばれるエポキシ樹脂による着色でしたが、このパッカーズのリングにはハードエナメル(七宝焼き)が使われています。七宝焼きは、欧州のハイブランド(ウェレンドルフ・ブルガリなど)が多用している伝統的なハイジュエリーの技法です。
MLBボストン・レッドソックス2013年チャンピオンリング
以下の画像は、当時レッドソックスに所属していた日本人トレーナーが貰ったチャンピオンリングで、修理の為にお預かりした実物を撮影したものです。
靴下マークのルビー、その背景のブルーのサファイヤともに、バケットカットやテーパーカットの石を形状に合わせてリカットし、留め爪が見えない「ミステリーセッティング」(別名アンビジブルセッティング)で留めてあります。このミステリーセッティングは、フランスを代表するハイジュエリーブランド:ヴァンクリーフ&アーペルの得意技でもあり、世界でもこのミステリーセッティングが出来る職人は数える程しかいないと言われています。
更に進化するチャンピオンリング
21世紀になり、ハイジュエリー並みの技法が取り入れられたチャンピオンリングですが、更に進化を続けています。それは、伝統的な石留めや七宝焼きなど「ローテク」の技法に加え、「ハイテク」の3DCADと3Dプリンターの併用です。
NBAクリーブランド・キャバリアーズ2016年チャンピオンリング
このキャブスのチャンピオンリングは、「ローテク」+「ハイテク」の「ハイブリッド・チャンピオンリング」の最初の作品と言われています。
現代のチャンピオンリングの最新技法全てが取り入れられ、更に3DCAD+3Dプリンターを活用した最初のチャンピオンリングです。この革新的な試みは、伝統的なアメリカのチャンピオンリングメーカーではなく、カナダの新興メーカーBaron社が作りました。
ツートンメタル、ハードエナメル:七宝焼き(Cマークの深い赤)、更にWORLD CHAMPIONSなどの文字にもダイヤのパヴェセッティングがされています。
更に注目すべきは、サイドパネルのクリーブランド市のスカイライン(市街地の街並み)の立体彫刻、サイド脇にイエローゴールドではめ込まれた選手名部分です。これは、それぞれの部分を3Dプリンターで原型出力をしているが為に、コンマ数ミリ単位で寸法の合ったイエローとホワイトのパーツを組み合わせる事が出来る「象嵌(ぞうがん)」という技法です。
象嵌:インライド、ステンドグラスが代表例で、異なるパーツの接合面の形状をすり合わせ、ぴったりはめ込む事。
このBaron社の3DCAD+プリンター、そして研磨や石留めのローテクを組み合わせた「ハイブリッド・チャンピオンリング」の製作過程は、同社がYou Tubeで公開しています。
翌シーズン開幕戦では、大々的にチャンピオンリングセレモニーが行われ、アリーナ外にもパブリックビューイングなどが設置され、街全体で盛り上がったようです。
そしてチャンピオンリングのビジネスモデルが確立
ハイジュエリー並みに高度化したチャンピオンリングは、ただ単なる「選手へのご褒美」としては費用を負担する球団にとって高価なものですが、そこはスポーツビジネスの本場アメリカ。チャンピオンリングを軸にした関連ビジネスを展開し、優勝時のビジネスモデルを確立しました。
NHLワシントン・キャピタルズ2018年チャンピオンリング
NHLのワシントン・キャピタルズのチャンピオンリングも最新トレンドの「ツートンメタル」「ミステリーセッティング」「エナメル」「文字彫刻への石載せ」など高度な技法満載です。そしてキャバリアーズのリングにもあった「インサイドスタンプ」というリング内側への特殊彫刻も施されています。
このキャピタルズのチャンピオンリングを軸に、関連商品をNHLはビジネスとして大々的に展開しました。以下はNHLのオンラインショップのスクリーンショットです。
本物のチャンピオンリングは$12,018.00(日本円150万円強)、シルバー合金のファン向けリング$599.00(7万8千円相当)と一回り小ぶりのリング$399.00(5万円相当)、ドッグタグ型ネックレス$299.00(3万9千円ほど)、カフス$329.00と$269.00の2種、バンドリングとシグネットリング$249.00、チャンピオンリング型のペーパーウェイト(文鎮)$159.00、キーホルダー$29.00などなどと多彩な商品群をオンライン販売したようです。
↓↓↓↓↓キャピタルズの関連商品ではありませんが、こんなグッズも↓↓↓↓↓
NBAゴールデンステート・ウォーリアーズ2018年チャンピオンリング
なんと、このリングに至ってはベゼルとボディが分離して、隠れたボディ上部にも彫刻が施されています。
そして翌シーズンの開幕戦でのチャンピオンリング贈呈式も大々的に行われます。身長2m級のプロバスケ選手が着用してフォトジェニックなサイズです。
そしてこの開幕戦は、チケットに合金製の「チャンピオンリング・レプリカ」がギブアウェイとして付いてくるのです。本物と全く同じ顔、同じ大きさですが、亜鉛合金とガラス・樹脂などで作られた時価$20-$30(2500円~4000円相当)のものです。
このチャンピオンリング・レプリカはファンにとっては凄い宝物です。選手に贈られるチャンピオンリングは1万ドル超えですので手が届きませんが、これならOK!!ファンクラブの入会特典やスポンサー向けプレゼントにも使われますので、数万個の大量生産でコストを抑えて、大量に流通しています。
試しに「ウォーリアーズ チャンピオンリング」と検索してみてください。日本のAmazonや楽天でも数千円で買う事が出来ますよ。
MLBロサンジェルス・ドジャーズ2020年チャンピオンリング
ツートンメタル、ミステリーセッティング、エナメルなどトレンドそのものの作りです。
貪欲に進化し続けるチャンピオンリングとその関連ビジネス。どこまで行くのでしょうか?我々メーカーとしては大変です・・・・・「技術革新無きメーカーは死ぬ」の格言通り、立ち止まれば、即、市場から弾き出されてしまうでしょう。
我が社は、2022年5月に会社名を有限会社フィリップカレッジリングから有限会社フィリップチャンピオンリング アンド カレッジリングに変更するなど、チャンピオンリングを主軸に事業展開をしていますので立ち止まる訳にはいきません。