硫化作用
シルバーの硫化について詳しく知る
空気中などに含まれる硫化物(硫化水素や二酸化硫黄など)と銀が化合して黒っぽい硫化膜を形成すると「銀が硫化した」と言う事になります。一般的に「銀が酸化して黒くなった」と言いますが、化学的には間違いで銀は酸化しません。この銀が硫化した状態を「いぶし銀」とも言います。

有名なシルバージュエリーのクロムハーツは、この硫化を上手く利用してモチーフのコントラストを出し、独特の質感を表現しています。

この銀のお椀は、表面のみわざと硫化させて、凸凹に質感を表現する技法です。



Philip College Ringの標準仕上げ「黒美仕上げ」も銀の硫化を利用したものです。
このようにして技法として硫化を利用すれば良いのですが、「意図せぬ硫化」は「変色」となってしまいます。

この銀器(皿)はまだらに硫化してきており、「汚らしい変色」に見えてしまっています。
硫化は、「淡い黄色」→「薄い茶色」→「濃い茶色」→「薄い銀灰色」→「濃い銀灰色」→「ほぼ黒」と進行します。

この画像は、ナチュラル仕上げで2年間放置してあったシルバーカレッジリングです。かなり激しく、且つムラになって硫化しています。
硫化が激しい部分とさほど硫化していない部分の色目が違う事がわかります。


どのような環境で銀は硫化するのか?
空気中にある硫化物が銀表面に結合する事で硫化する訳ですが、私たちの生活環境中に存在する硫化物とは?
★自動車、工場等の排気ガス
★おなら
★硫黄臭のする温泉街の空気
★火山ガス
★硫黄そのもの
などがあります。
つまり、幹線道路沿いのお住まいや火山の近く、温泉街にお住まいの場合は常に空気中に硫化物が濃く存在するので、お持ちの銀製品が硫化しやすいという事です。
以外なモノで注意すべきは
ゴムには硫黄が含まれます。 卵も硫黄分が強い食品です。
錆びた上水道管・貯水槽の水道水には硫化物(鉄の錆)が含まれます。特に築年数の長い集合住宅の場合、貯水槽や館内上水配管にサビが発生しやすく、その水道水にシルバー製品が頻度高く触れると徐々に硫化してきます。
硫化したカレッジリングをお手入れするには?
中には「いぶし銀」状態のリングを「味が出てきた」としてそのままお使いになる方も多くいらっしゃいます。



いぶし銀状態がお好みでない方は、以下の方法でお手入れしてください。

しかし、あまり頻度高く研磨剤入りクロスで磨くと、彫刻の角が丸まってきたりしますので、変色してきたかな?と思ったら、軽く磨く程度にしましょう。
但し、ナチュラル仕上げの場合は磨きクロスでは、彫刻の凹み部は磨けません。その場合は、以下の液状クリーナーによるお手入れが必要です。
磨きクロスで手に負えなくなった硫化には、液状クリーナーが効果的です。但し、市販の液状クリーナーは様々な成分のものがあるので、選ぶ際に注意が必要です。
当社製品にお勧めなのは、アンクルビル社の液状クリーナーです。


但し、液状クリーナーは一部の天然石(ターコイス、エメラルド等)の艶や色を失わせたりします。成分によってはエナメル着色表面保護膜の透明樹脂を濁らせたりもします。
液状クリーナーの説明書には、必ず「使用不可」の素材が記載されていますので、ご自身のリングの素材と照合した上でお使い下さい。Philip College Ringユーザーの方は、ご自身でメンテナンスされる前に、当社にお問合せ頂く事をお勧め致します。
ナチュラル仕上げのお手入れ
シルバー製ナチュラル仕上げのカレッジリングをいつまでも美しく保ちたい場合の大敵は、「汗」「手垢などの汚れ」です。
汗は体内の尿素など硫化成分を含みますので、シルバーの硫化を促します。汚れそのものはシルバーに作用する訳ではありませんが、彫刻のすき間などに入り込み、汚らしくなってきてしまいます。

従ってシルバーのナチュラル仕上げの通常のお手入れは、ぬるいお風呂程度のぬるま湯(36-37度の体温程度がベスト)に数分浸漬すると、磨けない彫刻の凹み部についた汗や汚れが取れ、いつまでも全体が美しい銀無垢に保てます。

汚れが激しい場合は、ぬるま湯に数滴の中性洗剤を入れて同様に数分浸漬するとがんこな汚れも落ちます。熱すぎるお湯は、逆に硫化させてしまう場合があります。
もちろんきれいな水で十分にすすいで、ティッシュペーパーで水分を拭き取って下さい。

こうした日常のお手入れをしていても変色してきた場合は、上記の液状クリーナーをお試し下さい。
但し、特定の天然石やエナメルなどオプション加工の一部は、液状クリーナーで劣化・変色・変質したりする場合がありますので要注意です。
例:天然ターコイズやエメラルド、エナメル加工の表面被膜の透明樹脂など。
シルバーの硫化についてのページは以上です